【別譚2】家族

  
真っ暗な場所。どこを見渡しても暗く静まり返ってる。しかし嫌な暗さではない。睡眠時のまどろみのような暗さ。するとふと目の前に小さな灯りが灯る。そこからふたり…いや2匹の生き物が現れた。

『やぁまた来たのかい?全く物好きもいるものだね…』
また…?
『あら…あなたは…そうまた来たのね…こんな所まで”キオク”を見に来るなんてあなた以外にもこんな人がいるのね』
『一言余計だよな〜君は』
わーわーと元気に話す1匹と静かに受け答えするもう1匹の光景に唖然とする。なんだこれ
『こういう扱いはあなたにしかしてないわ』
『えっそれはひどい』
しゅんっとしている1匹を無視したもう1匹はさて、とこちらに振り返りお辞儀をした。
『それよりも今回も来てくださったあなたに感謝を。これから我が息子の…いや娘かしら…その話しをしましょう』
我が息子…?娘…?
『さぁさぁよってらっしゃい見てらっしゃい。これより話すのは造られたなり損ないの化け物の話なり。』
造られた…バケモノ?
『まもなく開演致します。彼が生きた証をとくとご覧あれ』
ちょっと待って!よく分からないんだけど!状況が全く理解できな
『大丈夫よ、あなたはただの傍観者。あなたは”連れ戻すため”に彼を知るためにここに来たのでしょう?』
連れ戻す?一体誰を…
『あなたの愛する人。』
私の愛する人って…と聞こうとした瞬間視界がぐらつく。急なめまいに耐えようと踏ん張っていると
『おや?もう来てしまったか…もっとオレ的には話したかったけど仕方がない。じゃあそろそろはじめようか!』

『開幕』


その声とともにほのかに灯っていたロウソクの火は消され私の意識も消えていった。



 ふと目を開ける。いつの間にか僕はハカセを待っているうちに眠ってしまったのだろうか。ハカセの言う通りに待ってなきゃと身体を起こすと先程の洞窟の中ではなかった。周りは草花や木々が鬱蒼と生える場所だった。何が起こったかわからなかった。でも一つだけ分かったことはある。
『ハカセの元に帰らないと』
急いで身体を起こそうとすると上手く動かせず身体に力が入らなかった。…そうだった。いつハカセが帰るかわからないからずっと何も食べないで待ってたんだった。通りで動かない。どうしようと周りを見渡していると全身真っ白な生き物が現れた。ハカセ以外は絵本の中でしか見た事ないからとってもびっくりした。すると
「あぁ、目が覚めたのね?良かったわ…」
そういった。この”ヒト”は誰だろう?口を開くがあっあっと情けない声しか出なかった。
「大丈夫よ、安心して。ここにはもう人間達は来ないわ。商人たちやあなたを置いていった人間も来れない。あなたはここで仲間たちと安心して暮らしていいのよ。」
置いていった人間…?僕が不思議そな顔をしていると
「置いていった人間、あなたがハカセと呼ぶ人間よ」
ハカセ!ハカセが置いていった人間?そしたら訂正しなきゃ。ハカセは僕を置いていったんじゃない。また戻ってくると言ってた。いい子に待ってなさいって言ってた。だから…
「チガ…ウ…ハカ…セモドッ…テクル…!ハカセノトコロ…モド…ル…!!モドシ…テ…!」
なんとか搾り出せたたどたどしい声。もっと勉強しなきゃ。ハカセみたいにもっと喋れるように…ハカセともっとお喋りできるように…!だから戻らなきゃ。ハカセのところに戻ってもっともっと一緒にいたい。その思いで伝えると、目の前の”ヒト”は悲しそうな顔をした。
「…あそこにいるのはあなたのためにならない。こんなことはしたくなかったけど…きっとこうしなかったらあなたはあの人間のところに戻ってしまうわ…そうなってしまったらあなたは…ごめんなさい」
そう言ってその”ヒト”は僕のおでこに手を当てた。優しく暖かな手。そう思った瞬間いきなりどっと頭の中に強い圧がきた。ううん頭の中の記憶がぐるぐると溶けだしては別のものに組み替えられるような…あぁやめて…お願い…ハカセとの記憶が…ハカセ…?ハカセって誰だろう…ぐるぐるぐるぐる。わからない。頭が理解できない量の情報量。頭が痛くなってきた。どんどんその痛みは強くなる。ついに痛みが耐えきれなくなりプッと意識が途切れた。
「…ハ…カセ…」

 次に目を覚ました時にはもう暗くなってしまった。目の前には心配そうに見つめる。”兄さんたち”とそして”お母さん”がいた。
「やっと起きた…!良かった…!!」
そう言って抱きついてきたのはクラ姉さんだった。心配したんだから!といって頭をわしゃわしゃた。
「ワッ…エヘへ/////」
頭を撫でられるのが嬉しくってついにやけてしまった。するといきなりア゙ア゙ア゙ア゙ア゙すごい勢いでなにかが飛んできた。一瞬分からなかったけどダイ兄さんだった。その後からひょこっと顔を出すのがクダ兄さん。
「良かったア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ほんとにごめんなー!!!兄ちゃんが目を離したから川で落ちて頭をうって…ほんと…ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
と顔を涙でいっぱいにして言った。
「目が覚めて…良かった…」
とクダ兄さんも安心したとほっとした顔でいってた。そしてそっと頭を撫でられその方向を見ると”お母さん”だった。
「良かった…目が覚めて本当によかったわ…」
そういって”いつも”のように優しく頭を撫でてくれる。僕は”お母さん”の撫でてくれる手が好きだ。
「オカアサン…!」
と笑顔で応える。するとお母さんは一瞬寂しそうな顔をしてぼそっと何かを言った。一体何を言ったかわからない。でもすぐに兄さん達がわーと集まってきてお母さんに何を言ってたのか聞くタイミンクを逃してしまった。するとぐぅぅと大きな音がした。僕のお腹のからだとわかった瞬間恥ずかしくなってしまった。顔が真っ赤かな僕を見てみんな笑った。僕は”家族”の笑顔が大好きだ。するとお母さんは僕の頭の後ろを確認して
「大丈夫…そうね。さてそろそろ夜ご飯にしましょうか。」
そう言って立ち上がったお母さん。お手伝いする!といって姉さんたちは次々と立ち上がる。もたもたしてると
「ほら!兄ちゃんと一緒に行こう!」
そう言ってダイ兄さんが手を出して引っ張ってくれた。頼もしいダイ兄さん。物静かでいろんなことを知ってるクダ兄さん。みんなをまとめてくれるクラ姉さん。そして大好きなお母さん。みんな大好きだ。そうたとえ僕以外がみんな身体の色が真っ白で僕だけ真っ黒でも、みんな優しくしてくれる。そんな家族が好きだ。うん!と言って兄さんのあとを追いかける。ふと『✕✕…ごめんな…ごめんな…』と声が聞こえた。でも後ろには誰もいない。
「どうした?」
と兄さんは心配そうに顔を覗いた。
「ウウン!ナンデモナイ!」
そう言ってあとを追いかけた。

……なにかとっても大事なことを忘れてる気がする…するけど、今が幸せだからいいや。そう言い聞かせて家族の元へ向かった。

Naomi

ダーくんとナオミちゃんの物語をのんびり書いていきます。

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