今日もいつもと同じように姉さんたちと遊んでいた。今日は姉さんにブルースターという花について教えてもらった。小さくてとても綺麗な青いお花。姉さんが
「このお花、××の目みたいね」
と言ってくれた。僕の目みたい…そう言って貰えてとっても嬉しかった。花言葉も教えてもらった。花言葉は…”信じあう心”今までの花の中で一番のお気に入りの花になった。だから夕飯の時も姉さんに作ってもらったブルースターの花飾りをつけて食べた。すると兄さんたちが可愛いぞ!とか似合ってると言ってくれた。たくさん兄さんたちに褒められてもっともっとお気に入りの花になったんだ。それからご飯を食べたあとは兄さんのお膝にのってこちょこちょをしたり遊んでいた。すると突然お母さんはばっと森の入口の方をみた。すると兄さん達もさっきまでとは違い表情がみるみるうちに強ばっていく。今まで見たことの無い表情だ。おかあさ…と声をかけようとすると
「クラ、クダ、ダイ、××よく聞きなさい。私は今から森の入口の様子を見てくる。4人は決して入口の方に来てはダメよ。」
とっても真剣な目。さっきまで楽しいご飯だったのに…兄さん達のあとに続いて僕も頷く。じゃあ行ってくるわといってお母さんは森の入口へ行った。その様子を見送ったあと僕は兄さん達に聞いてみた。
「にいさん…」
「…ん?どうした××」
「おかあさんはどうしてもりのおくにみにいったの?」
「…××は気にしなくて大丈夫だぞ?」
そういってダイ兄さんは僕を抱えて微笑んだあと森の入口の方をずっと睨みつけていた。ほかの兄弟も同じ方向を睨みつけている。クラ姉さんが
「…万が一に備えて私達は隠れていましょう」
「あぁ」
「そうだな、××もいる。」
といって森の奥へ行こうとした瞬間だった。ピシャァァッという青い稲妻が森の入口から走った。みんな驚いてそっちの方をみる。
「母さんに何かあったんだわ…!急いで奥へいきましょう」
そういって行こうとした瞬間だった。姉さんの後ろの森の奥から紅い目が見ていた。僕はひいっと声を上げてしまった。言ってしまった。するとその紅い目に真っ赤な口が浮き出た。
「 ミ ツ ケ タ 」
その声の方にみんなばっと振り向く。大きな黒い黒い闇がやってきた。姉さんの
「逃げて!!!!」
の一言にみんな一斉に逃げる。僕はダイ兄さんに抱えられながら
「××!絶対に離すなよ!!!」
「う、うん!」
僕は兄さんに言われた通り必死に兄さんの腕にしがみついた。ハァハァと聞こえる兄さんの息遣い。ぼくは怖くて目をつぶった。そのとき今だ!という小さい声が聞こえた上を見上げると兄さんと僕のうえに草で作られた紅い網が襲ってきた。
「危ない!!!」
といって兄さんは僕を突き飛ばした。あまりのことでわからなかった僕はそのまま地面に叩きつけられてしまった。衝撃によりカハッと空気を吐き出した。呼吸が出来ず苦しかったが目の前で兄さんが網に捕まっていた。ぎぃぎぃと僕は声を出すしかできなかった。すると兄さんはこちらを見て
「××!!!!逃げろ!!!!」
と叫んでいる。わからないけど兄さんが言うなら逃げなくちゃ。そう思ってもうまく身体が動かせない。不意にピリッ!!!と首の付け根あたりに何かが走った。すると意識がどんどん遠くなっていく。遠くで兄さんらしき叫び声と知らない”誰か”の声が聞こえた。
「××…!!!!そ…こ……なせ!!!!」
「うるっ…ぇ……だまっ……!」
「ぐはっ!!」
「はは…見ろよ!ただ…え…めずら……ん……に……ちがい……た!これは……くうり……せるぞ!!」
その声とともに身体が宙に浮いたことが分かる。
「あ……はどうし……か?」
「今日の…くひょ…は……せいした……っておけ」
どんどん聞こえずらくなっていく。最後に見た景色は兄さんがぴかぴかした何かが走る網に兄さんが捕まってる姿だった。
それから目を開けると僕がいた森の姿はなくとても暗く冷たい場所に首になにか付けられているお母さんが僕を抱きしめて泣いていた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…こんなことに巻き込んでしまって…××あなたには幸せになって欲しかっただけなのに…!ごめんなさいごめんなさい…」
謝り続けるお母さん。どうしたの?泣かないで。いつもみたいになでなでしてよ。ねぇなんで声が出せないの?お母さん…そう言いたかったけど声が出なかった。だから僕はお母さんの胸に頬を擦り寄せた。するとお母さんは驚いた目をして、それから意を決したように言った。
「××…これから私はあなたに酷いことをしなくちゃいけないの。以前は何も言わずにやってしまってごめんなさい。でも今回は覚えたままあいつらの手に渡ったら…とても辛いことが待ってるの。幸せな記憶を持ったままだとこれから悲しいことしか待っていない人生になってしまう。だから今は幸せな記憶は消さないと。消して…悲しみの中で幸せを見つけて…貴方だけの…幸せを」
お母さん?何をするの?ねぇなんで僕のおでこに手をのっけているの?
「あぁ…神よ、我が主よ。これより私…”クダラ”という個体は我が命を糧に神の使いへの試練の加護をこの子へ讓渡いたします。この子が無事試練を乗り越えるまでどうか加護…生き返りの加護をお与えください」
かみ?しれん?いきかえり?ねぇお母さんどうしたの?
「××…ごめんね…愛してるわ。私はいつまでも貴方を見守っているわ」
そういってお母さんは涙を浮かべたまま僕の頭に手をのっけ、何か呪文を唱えた。また意識が遠くなる。やだ…この感覚…わからないけどもうやだ…ねぇおかあさと言いかけた瞬間。お母さんは灰となって散った。
「おか…あ…さ…!」
そして僕の意識もそこで途切れた。
0コメント